建築?環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]
住宅の平面構成に関する研究 -居室と通路による類型化と個室からみた考察-
菅原茉利
竹内昌義 ゼミ

 住宅は私たちにとって最も身近な建築といえる。日本本土空襲によって住宅が焼失した1945年から約70年、日本では高度経済成長期、公害、東日本大震災をといった社会の変動、人口の増減、高齢化率の急速な増加、産業や医療技術の発展などが進み、私たちの生活状況は大きく変化した。この発展する社会に応じて変化する私たちの暮らしに、それと切り離すことのできないはずの住宅は果たして対応し変化しているのだろうか。
 そして昨今の新老虎机平台,最新老虎机による世界規模の社会変動。本学でも今年度の前期の講義は全てリモートで行われるなど、感染拡大防止のための外出自粛では様々な対応が求められ、ネット環境だけではなくパソコン越しに映る背景や家族の存在が気にならない場所に困るなど在宅環境の問題も多々あった。こうした問題は、ひとり一台のスマートフォンが象徴するように個人で社会と繋がる力が増えている現代、新老虎机平台,最新老虎机により在宅時間が増えたことによって発見した住宅の盲点なのかもしれない。生活に不具合を感じていることは、逆に、勝手に進む社会になんとなく付いてきた私たちの意識を取り戻すきっかけになるのではないかと思う。この今だからこそ、現代住宅を見直しこれからの住宅を考えるべきではないだろうか。
 本研究では、住宅の平面構成の特に個室に注目して建築家の住宅作品と商品化住宅との違いや特徴、構成の変化を社会の流れとともに考察し、これからの住宅を考える足掛かりとすることを目的とする。分析対象は、戦後の名作といわれる建築家の住宅作品に、現代では住宅の新築着工に多く割合を占める商品化住宅を、住宅研究において不可欠であるとして加え、計100の住宅に絞った。これらを1/100にトレースして規格を揃えたサンプルの平面図をそれぞれ部屋に塗り分けた(図1)。このサンプルを分析しやすくするために住宅の出入口から個室までの構成によりモデル化し(図2)、似た構成ごとに類型化して6つのタイプに整理した。そして整理した6タイプから年代での分布や外形の変遷を分析した。今後のポストコロナ時代では、どのような住宅にしてゆけば良いのだろうか。これからの住宅を考える第一歩となる、住宅平面構成の変遷と社会状況との関連性、そして現代の住宅の傾向を明らかにした。


竹内 昌義 教授 評
日本の住宅の平面図(まどり)の研究である。建築家やハウスメーカーは、その時代によって適した建物の平面プランを考える。菅原さんは、昭和20年以降から現在までの平面図100個を集め、部屋を家族が中心にすごす居間、廊下、プライベートな個室に分け、各部屋を図式として表しながら、それぞれの関係について調査した。当初は居間と個室が直接つながるものが多かったが、時代と共に、居間を通らずとも個室に直接行けるように変化していく。そしてその後、居間を通りつつ個室にもつながる形が多くなってきている。また、ハウスメーカーの家は時代に関わらず形が複雑であることを、角の多さに注目して解き明かした。このように時代や社会の変化に応じて、多くの建築家やハウスメーカーが工夫し、現代に至っていることがわかった。現在のコロナ禍をうけ、住宅のプランもまた変わっていくだろう。

図1. 分類ごとに着色したサンプル

図2. 平面構成からモデル化をした例